令和6年11月号 マスク
5類移行で一時期は少なくなっていたマスク姿がコロナ再燃で再び増えてきました。コロナ最盛期にはマスク着用は個人の自由なのか公衆衛生の面から必須なのかの論議もあり,公共の場や交通機関ではマスク非着用者は忌避されトラブルになった事件もありました。流行当初は国中で一斉にマスク購入に走り店頭から消えてパニックとなり,残った物は1枚が数百円もしたそうです。それでも入手困難で,海外からさまざまなルートで大量購入して高値で転売する不心得者もいました。半世紀前のオイルショック時と同様の社会混乱がありました。国も緊急事態の対応として国民にマスクを配布しましたが,莫大な費用をつぎ込んだにしては粗悪品で評判が悪く,あまり使用されなかったようです。結局,勿体なくも大量に廃棄されたそうです。マスクではウイルスは防げず無駄との意見や,感染を拡大させないためには有効等々の意見まで,有識者?の解説付きで頻繁にマスコミが伝えていました。著明な感染症専門家の講演によれば,「今後も新興再興感染症は起こり得る。パンデミック感染症は飛沫感染やエアロゾル感染による呼吸器系感染症が最も考えられる。したがって完全ではなくともマスクは効果がある」との話でした。
マスクの歴史を見ると,中世のヨーロッパで人口が半減するようなペストが流行した際に医療関係者が使用した記録があるそうです。それも現在の形ではなく,仮面に似たものでした。当時は疾病の実態が判らずに,多分に呪術的な要素が大きかったようです。我が国では100年前のスペイン風邪流行の際に一気に普及したとの記録があります。その記憶が遺っている人たちがいた昭和のころ,冬場はマスク使用者が多く見られ,子どもたちも強制的にマスク使用とうがい・手洗いをさせられた記憶があります。
今回のマスク流行時にはさまざまな素材・色・形やファッション性を取り入れたもの,コミュニケーションのために口元の見える奇異なタイプも発売され,価格もピンからキリまでありました。マスクの功罪についてもさまざまな意見があります。利点としては感染予防を第一として,日焼け予防,マスク美人,有名人にはマスクとサングラス・帽子は必需品です。欠点としては息苦しい,コミュニケーション欠落,費用などが挙げられます。
コロナやインフルエンザも再燃を繰り返していますし,非装着にこだわっている人たちもいますが,今後しばらくは着用が普通のこととして定着するものと思われます。私たちもその社会現象を受け入れなければならないようです。
令和6年11月号