令和7年4月号 温泉と健康
先日,県医師会で県民健康セミナーを開催しました。鹿児島大学大学院 リハビリテーション医学 教授の下堂薗恵先生,宮崎大学医学部 精神医学分野 教授の平野羊嗣先生に温泉と健康・睡眠などについての講演をお願いし,多数の県民に聴講していただき好評でした。
温泉の定義は「温度が25℃以上である,もしくはある物質が決まった以上含まれていること」であり,含まれている物質により単純泉,塩化物泉,二酸化炭素泉等々に分類され,浴用・飲用があります。温泉の効用については物理的作用として「温熱作用:血流改善で鎮痛作用,新陳代謝が活発化」「浮力作用:体重が軽くなり筋肉や関節の負荷が軽減」「静水圧作用:水圧によりむくみを解消」。科学的作用として「溶けている化学物質が皮膚や口から吸収される」「塩素イオンは殺菌作用で傷に効果」「含鉄泉は飲用により貧血に効果」「成分が肌に付き冷め難くなり冷え性に効果」「リンパ球やNK細胞の活性化で免疫機能アップ」。
これらは足湯でも効果があり,適度な温泉入浴で良好な睡眠も得られる等々です。メリットばかりのようですが注意も必要です。「空腹時や食後30分は避ける」「脱水予防に飲水」「飲酒後は脳卒中や心筋梗塞の恐れ」「掛け湯で体を慣らして入る」「38~40℃のぬるま湯に20分」「心疾患のある人は半身浴」「上がる際の掛け湯は付着した成分を流してしまう」等々です。
古くは温泉療法も重要な治療法であり,「湯治」「湯治場」「湯治客」の言葉が残っています。私も温泉が好きで,休日のたびに近場の温泉巡りをしています。隣県の鹿児島や大分ほどではありませんが,県内でも低料金で日帰り入浴可能な温泉が各所にあります。一時はボーリングで地下深くから汲み上げ加熱した温泉が各市町村にありましたが,運営上の問題で大半が閉鎖されてしまいました。少し足を延ばせば霧島付近にはさらにたくさんあります。なぜか鹿児島県側に豊富で,以前は鹿児島大学の附属温泉病院や労災病院もありました(現在は閉館)。九州には多くの温泉が身近にあります。羨ましいことに自宅にまで温泉が引ける地域もあるそうです。案内によれば温泉はほとんどの都道府県にあるようです。古来より傷や疾病の治療目的で開発され,さらに日本人の温泉好きも加わり,宿泊施設や治療施設まで整った有名な温泉が数多くあります。山中の秘湯といわれるものから温泉歓楽街まで各地にあり,中には川中や海中に湧き出る温泉もあるそうです。
皆様も快適な健康生活のために近くの温泉を活用されてはいかがでしょうか。
令和7年4月号