令和7年5月号 医政(再)
昨今の社会情勢下では地域医療における医政の重要度が増しています。昨年の診療報酬改定では医療関係者は残念な思いをされたことと思います。他業種では軒並み大幅給与アップの中で,医療関係者のみが蚊帳の外でした。日医の懸命の努力により,なんとかわずかながらもプラス改定に漕ぎ着けました。しかし,世間並にはとても及びません。これでは他職種に移る離職者も増えて人材の不足から,地域医療衰退がさらに進行し究極には崩壊してしまいます。加えて,物価高騰も想定以上で医療機関の経営悪化に拍車を掛けています。一旦崩壊した体勢を立て直すには数倍の時間と費用,努力が必要です。それでも政府のある筋からは相変わらず医療費削減の声が挙がっていますし,医療政策が決定される場では地域医療実情に疎い委員からも同調する動きがあります。今回の診療報酬改定後に医療機関の赤字がいかに増えたことでしょう。経営困難,職員の不足によって倒産の危機です。公的病院では予算から赤字補填されても,民間病院での現実は厳しい。廃業や統廃合が進んだ地域から医療機関がなくなれば,住み辛く過疎化がさらに進みます。過去にさまざまな医療行政改変がなされた結果,現場ではそのたびに悪化したような印象があります。後視的には以前の方がよかったと思える例が多々あります。
地域医療は医師が全力で患者さんとともに疾病に立ち向かうことが大前提ですが,それだけでは維持できません。残念ながら経営が成り立たなければ医療が行えません。「医は算術か」と蔑視する人たちもいます。「仁術」のみで対応できる社会であってほしいものです。
現在,医業における特典はわずかしかありません。逆に以前からの大問題である,消費税分の診療報酬手当てが不充分である現状は無視されています。社会の変化に連れて医療行政も変わるのは止むを得ません。しかし,医療従事者の生活にゆとりがなければ患者さんへの思いやりを持つゆとりも希薄になります。常に行政の方針を気にしながら,経営に不安を感じながらでは難しいのが現状です。
国にお願いしたいのは,医療従事者が心置きなく医療に専念できるシステムにしていただきたいということです。施政の原点でもある「国民の命を守る」ことを堅持していただきたい。私たちも医療に理解の深い政治家に働きかける必要があります。今,できることでなによりも有効なのは組織内候補で医師でもある「かまやち さとし」先生を強力に支援することです。地域医療を守るために絶対に必要です。皆様のご協力をお願いします。
令和7年5月号