令和7年6月号 幸福度
さまざまな統計が多くの機関から発表されています。興味を引いた統計で,「幸福度」なるものがありました。それによれば,昨年の宮崎県は全国都道府県で3位でした。1位は連続して沖縄県,2位は大分県でした。評価の根拠となる因子は7項目です。「健康」「家族・家庭」「友人・知人」「恋愛」「収入・財産」「仕事・学業」「趣味・娯楽」を数値化しています。以前は収入や裕福さが幸福の重要指標でしたが,昨今は自然やよい環境が求められているようです。時代の求めるものが違ってきているのでしょうか。世界では意外なことにブータンが幸福な国と言われています。今回の評価は少し異な感じもしますが,単純に好意的に受け止めて喜ばしく思います。
宮崎県は,農産物,海産物,森林資源が豊富で,自然や気候に恵まれています。さらに,全国一に評価されたものが数多くあります。宮崎牛,ふるさと納税,日照時間,焼酎出荷量,餃子の一人当たり消費量等々,分野ごとに検索すればまだまだあります。しかし,以前に比べて劇的な変化があったわけではありません。若者の都会志向は変わりませんし,人口減少は続いており,地域医療も厳しい状態です。それでも以前に比べて徐々にではあっても生活の利便性は向上していますし,欠点としていわれる知名度が低いこと,アクセスが悪いことも,視点を変えればそれが自然を守るなどと利点にもつながります。同じ事柄でも見方によっては欠点と長所は紙一重です。古くは県内市町村が押しなべて都会化を目指した時代もありました。今では地方のよさ・魅力を再認識し,それを生かそうとしています。県でも幸福度の向上に力を入れているようです。
データは因子や読み方によって評価が違ってきます。注意すべきは,結果を見据えた恣意的なデータの採り方です。「幸福度」は漠然としており,個人によっても基準が異なりますし,時期や立場,年齢によっても違ってくるものと思われます。上記の因子のみではとても表現しきれません。「愛が全て」という歌もあります。神社仏閣の絵馬には「健康」「家内安全」「合格祈願」などが多く,TVドラマでは「家庭の団欒」が幸福の象徴として取り上げられています。古の求道者は「道を究める」のが幸せであり,その他「飲・食・寝」「スポーツ・芸術」「信仰」「出世」「日々平穏」等々因子は無数に考えられ,それらの因子を加味すれば評価は違ったものになるでしょう。医療人としては「医療・福祉の充実」も挙げたいところです。
皆様にとりまして幸福度を評価する基準は何で,その満足度はいかがでしょうか。重ねて宮崎の住み心地はいかがでしょうか。
令和7年6月号