令和8年5月号 地域医療と適正化
第8次医療計画では,医師・医療従事者確保,外来医療,新興感染症対応,救急・災害医療などの,5疾病6事業および在宅医療,医療機能分化と再編等の適正化,医師の働き方改革等について重点的に述べられています。需要と供給の原則からすれば,人口減少が進むに従い,経済規模を含めた社会の在りようも縮小せざるを得ません。一方で,人の生活にはたとえ少人数であっても医療は欠かせません。「適正化」の言葉に幻惑されないようにありたいものです。
医療提供の機能分化案は一理あっても,第一線の地域医療の理念からは少し違和感があるように思えます。地域に求められるのは赤ひげやドクターコトーのように,何でもできる総合診療医ではないでしょうか。国もその必要性から「かかりつけ医制度」を推し進めようとしています。日医は制度化には反対で,かかりつけ医機能の充実を推奨しています。過去には社会の風潮で皆が専門医を目指した時代があり,その弊害が診療科の偏在となってしまいました。かかりつけ医機能を持った医師が地域に溶け込めば医師偏在は解消されるはずですが,いまだに充実しないのは総合診療医が専門医の1分野になってしまったからでしょうか。
更に適正病床数が以前から論じられています。国の病床数適正化支援事業により,多数の病床返還が進められています。更に減らすべきだと強調する政治家もあるようです。しかし,本当にそれだけ減らしてよいのでしょうか。単に病床数のみにこだわらずに,地域によっては必要な地域密着型の病床は確保すべきではないでしょうか。特に,一次救急や回復期の病床は地域には必要と思われます。さまざまな意見はあっても本当に必要な病床数は何床なのか,小手先の改編ではなく,将来の人口動態まで含めて明確な数字を出して対応すべきです。数十年来,小さな改革が実施されてきたにもかかわらずいまだに根本的な解決が見られません。これは病床に限らず将来医療の位置付けが基本となります。適正な病床数のみではなく適正医療機関数,適正診療科数が,究極には適正医師数なども検討する時期に来ているのかもしれません。
医療をなくすことは絶対にできません。新しい構想の下に整理するには,拙速な施策は無理であり,既成の医療機関や,医療従事者への補償や対策も忘れてはなりません。前の改定が馴染んできたころには次の改定があるように,頻回改定の連続で第一線では変革に十分対応できない状態です。少しずつ改善してゆく方針もありますが,しっかりした計画の元での施策をお願いしたいものです。
令和8年5月号