令和8年7月号 医師不足問題(再)

 宮崎県は九州でも唯一の医師少数県です。医師不足地域解消を狙って宮崎大学には地域枠入学制度が設けられ,今では40名枠となっています。通常募集では毎年100名の医学部生が入学・卒業しても2~3割しか県内に残らない状態が続いていました。それでは何年経っても解消につながりません。そこで行政や民間からの要望もあり,県内に残ってもらう手段として地域枠が設けられました。しかし,地域枠でも卒業後に残らない人がいます。それぞれに事情はあるのでしょうが,地域枠の趣旨とは違っているように感じます。
 更に,臨床研修制度が始まって年数が経ち,さまざまなほころびが目立つようになりました。1例として,研修制度は保険医になる医師を養成するための重要な制度である中で,「直美(直接美容外科)」といわれる保険医資格の必要がない自由診療に進む医師が,全国では数百人にもなるそうです。この数は卒業数から見て2~3の大学医学部が消えてしまったことになります。この問題も何か釈然としません。
 古いシステムのすべてを礼賛するつもりはありませんが,以前の医局制度にもそれなりの利点があったのではないでしょうか。入局数年後からは医局の方針のもとへき地にもあまねく赴任していました。当時の卒業生はほとんど出身校に残り,医局に充分な医員がプールされ派遣する余裕がありました。今では,教室の運営が手一杯の人員で,派遣する余力はないようです。医師をプールして派遣する仕組みは現状からみても有効であると思われます。最近は県でも医師のプール制を検討しているようです。
 昭和のころは全国で200万人の出生に対して医師誕生は3千名弱でした。当時はさすがに全国で医師不足が著明であり医師養成の増員が叫ばれていました。そこで医学部を増設しかつ定員を増やしたにもかかわらず,地域によってはいまだに医師不足が問題です。人口は減少傾向が続いている中で医学部定員が3倍に増えたのにも関わらず解消されていません。逆に人口当たりの医師数が過剰の恐れもでてきました。それでもなお地域によっては医師不足であるのは,養成方法に問題があったのではないでしょうか。単純に医師数のみを増やしても地域の医師不足は解消されないようです。本年度は9千名超の医師が誕生しました。現在の出生数は70万人弱なのでこのままだと80人に一人が医師になる勘定になります。これではいくらなんでも医師を作り過ぎるのではないでしょうか。国も将来の人口動態を勘案して医師養成の適正化を考慮し始めたようです。
 医療のない地域に人は住めません。官民協力してなんとか医療不均衡・過疎をなくしてほしいものです。

令和8年7月号